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肩で騒ぐ色気ある大妖怪様を他所に、雲母はビルの中へと進む。
ビルに入って直ぐに見えるのは二階に続くエスカレーターである。一階と二階が吹き抜けになる内部は解放感があり、淡麗な造り。外観もガラスで覆われるが、内装もインテリ的である。
建物内にも多くの人が出入りがあり、エスカレーターで上を目指す者、入口近くにある総合受付所で聞いている人、はたまた各目的の施設へと足早に向かう者と多数いる。
その中、雲母達は慣れた足取りで端にあるエレベーターへ向かい、スイッチを押した。
「うぬ~階段が動くとは……面妖じゃ。汝よ? あれも雷(イカズチ)で動いておるのか??」
クオの赤紫色の瞳は既に好奇心で光り輝く。何せ、入って直ぐに階段らしいものが自動で動いて消えて行く。この建物内の造り自体が、既に驚きの光景で仕方ないのだ。
んん~説明したい気持ちはあるけど……
あはははっと小さく苦笑を浮かべる雲母は困ったもの。肩では興味津々の甘い声が飛び続けるのだから。
「久しぶりに来たな。あれ? 美希は来ていたのか?」
遊香の懐かしむ口調に「夏休み中は三回だよ」とにっこり微笑む。
「美希ちゃん来てたんだね。何か良いのあったかな??」
「勿論あったよ」
愛らしく微笑み浮かべる美希を見れば、確かにあそこは宝庫だもんね。と考える雲母の肩では「汝~? 動力は雷かと聞いておる」と錫杖を子供のようにシャリン、シャリン鳴らすクオがいたが……
ピーンポーン。滑らかな音が鳴って、エレベーターの扉が開く。
「――?! ……な、なんじゃ??」
喋りを中断しながら驚く狐様。なんか鉄の扉が勝手に開いた。そんな勝手に開いた箱の空間に歩む女子高生三人。
遊香がボタンを操作すれば独りでに閉まる扉、動き出すエレベーター。勿論、クオの疑問と興奮興味もエレベーターと同じように上昇を続けるばかり。
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