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そこに鞄を前に持つ少女の姿が。黒髪をおさげにし、どちらかと言えば内向的で物静かそうな文化系の彼女。少し大きめな眼鏡が似合い可愛らしく、雲母と同じく背丈の制服姿。
「おはよ~美希ちゃん」
雲母の挨拶に気づくと微笑を浮かべ「おはよう」と返す。
「じゃあ行こうよ」
「うん」
久方ぶりの再会にお互い元気そうなのを確認するように微笑みながら、歩き始めた。
ここから学校までは徒歩で数十分だが、二人はいつもお喋りして歩くと、あっと言う間である。
赤松美希(アカマツミキ)は中学時代からの友達で、自分に共通する事が多い。お互い料理と小説を読むのが大好き。けれども、運動はからっきし苦手である。
美希と盛り上る話題と言えば、やはり小説である。この夏に何か面白い小説を読んだかと聞かれたが、この夏休みはとてもじゃないが読書する時間など無かった。
それ以上に、自分が小説空想物語同様な体験をする羽目になるとは、誰が予想出来たか。
自分の夏休み期間はアルバイトが忙しかったので読めなかった事にした。お互い夏休みはやる事があったので、歩きながら近況報告をする事にした。
二年A組と書かれた教室に久しぶりに入れば、既に大半の生徒が揃っていた。
ガヤガヤと盛り上る教室では、夏休み明けもあり、様々な話題が飛び交う。部活の話題をする男子生徒は黒々と日焼けしており、ある生徒は、旅行やら彼氏彼女と遊んだ日々の自慢。
その中、雲母と美希は同じくクラスで、机の距離も近い。取り敢えず雲母が椅子に座る。
すると……
「き~ら~ら~おはよ!」
元気一杯、高めな女性の声に合わせて、着席する雲母の両肩をガシッと掴む。
――ビクッとしながら「ひぁ」と小さく悲鳴を上げた雲母に、ハハハッと笑いあげる少女。
「――び、びっくりだよ。おはよう、ユウちゃん」
そう言いながらも振り向く雲母は更に驚く。それは夏休み前と少女の雰囲気が変わっていたからだ。
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