学校へ

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 背丈は雲母よりも小さく、幼い表情は本当に高校生なのかと疑いたくもなる。そんな、菜下遊花(ナナシタユウカ)の髪色が変わっていた。背中まである長いストレートヘアだったのは変わらないが、明るめな茶髪になっていたのだ。 「ユウちゃん染めたの?」 「そうそう! 所謂、夏休みデビューってやつだよ。中々だと思わない?」  遊花の満面な笑みをみながら、今一度見る。うん。実際合っている気がする。元々、自分や美希のより明るく元気がある遊花ならば、なんら違和感を感じない。 「似合ってると思う」 「でしょ~? やっぱり女たるもの先々へ行かないと。美希もやってみたら?」 「私はちょっと自信無いからいいです」  もじもじしながら呟くその姿に「ええ~」と不満を口にする。  そんなやり取りを微笑ましく思いながら、雲母は教室を見渡す。  ……結構増えたかも。  遊花の茶髪程ではないが、微妙に髪を染めている人が結構いるのに気づく。きっと、皆も色々あったんだろうと考えた所で、チャイムが流れた。  名残惜しくも雑談に終わりを告げる音に合わせ、白いワイシャツ姿の男性教師が教室が入って来る頃には、全員が着席が終えていた。  ……キ~コン~カ~コン~……  聞こえる終業のチャイムに合わせ、学級委員長の声で号令か掛かり、礼をすれば…… 「ねえねえ~雲母? 三人久しぶり揃ったから、勿論行くよな??」  いつの間にか現れる遊花は、子供以上にハシャギながら雲母の傍にいた。 「私は予定無いけど、美希ちゃんはどうだろう?」  チラッと視線を移せば、美希は鞄に教科書をしまっている。今日は始業式もあり、授業は午前中で終わりなので、最早下校するのみだ。
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