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雲母が珍しく悩む姿に「ん?」と気づいた美希は首を少しだけ傾げれば、遊香も気づかない訳が無い。
「どーしたの?」
「――んっ?! あ、あ~ええっと~」
動揺丸出しにアハハッなんて笑いを織り混ぜながら、雲母は焦ってしまう。
「ちょ、ちょっとメールをなんて返すか悩んでいただけだよ」
やはり乱れた声色。美希はそれで納得をするが、好奇心旺盛は遊香が「はは~ん」と声を上げ。
「雲母~? もしや……男が出来たな」
――ギクッ。思わず呼吸を止めてしまいながら考える。
……か、彼氏。
……私の彼氏。
……――はぅ?!
ぽん。そんな軽い爆発が起きれば、雲母の頭からは白い煙りがモクモクと。
「き、雲母……真面目に彼氏が出来たのか??」
何より聞いた張本人が驚き、声色が揺れている。それに続く美希もまた、大きめな眼鏡の奥の瞳が、瞬きを強める。
「……ぁぅ……ぇっと……」
困る。困った。いきなりこんな話題になるなんて予測はしておらず。彼氏と他人に言われて、なんか今更ながら更に意識してしまえば、胸の鼓動が高まるばかり。
――と、店員の声が響く。
「あ、呼ばれたみたいですね」
クスッ。と笑みを浮かべ美希が立ち上がる。つられて遊香も「じゃあ行くか」立つが、雲母はまだまだ妄想爆発中。そんな雲母に美希が声を掛ければ「ぁぅ」と弱々しい声で漸く我に返る。
昼の時間で賑わう店内奥のテーブル席に通された三人。店員が挨拶とオススメを紹介が終わり去って行けば……
妙に無言になる三人。
雲母は今だ白い顔をリンゴのように赤々しくさせながらメニューを眺める素振りをするが、勿論、頭の中はそれどころじゃない。
これは本当に彼氏が出来た? 美希も遊香も思わず瞳を見合せて視線でそう語る。
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