序章

2/9
前へ
/170ページ
次へ
「君はこの世界に人が多すぎると思ったことはあるかな?」 依頼人は電話をしてくるなり何の前触れもなくこう言ってきた。 「私は何度も思ったことがあるよ。例えば、大都会にはたくさんの人がいるよね。それを高い所から見下ろしてみる。そうすると、たくさんの点がうじゃうじゃと動いて見えるんだ。でも別にそれを見ても人がたくさんいるなとしか思わない」 これ、長くなりそうだな。 めんどくさ。 「次にアリの大群を考えてみよう。たくさんの点がうじゃうじゃ動いて見える。これを見たら気持ち悪いだろう? 考えたくもない」 相手は俺に相槌を求めているのだろうが、俺は答える気がない。だってほとんど耳に入ってないもの。
/170ページ

最初のコメントを投稿しよう!

25人が本棚に入れています
本棚に追加