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「…あの時、小学部の先生に休んでいた貴女のプリントを家が近いからって理由で届けるよう頼まれて…偶然そこに行ったのよね…」
「そうね…私はあの後からの記憶がないけれど…」
あの時、祖母に背中を斬りつけられ、私は1週間生死の境を彷徨った
祖父が祖母を取り押さえ、雪那が素早く救急車を呼んでくれたそうだが、父はただ震えていただけだったと…
それに、あれは事件にはならなかった
家の力で全ての真実はその場だけに留められ、代わりに私が自分で怪我をした事になった
遊んでいてたまたま刀の上に転んだと…
真実を知っているのは私の家の者と雪那だけ…
今、雪那が触れている背中には、肩から腰にかけて 16歳には相応しくない大きな傷がある
「あの時…貴女がいなければ、私は死んでいたかしら…?」
「そうね…でも、貴女は生きているわ…」
「そういえば…雪那ずっと病院にいてくれたでしょう?顔はボンヤリしか思い出せないんだけど…ずっと私の手を握ってくれてたわよね」
意識が戻りまだはっきりしない意識の中で 私の手をしっかり握っていた女の子
顔ははっきりは分からなかったけど、その手の温もりは今でもはっきり覚えている
私はそれはずっと雪那だと思っていたんだけど…
「え?」
「違った?夢だったのかしら…」
そう言った私に雪那は微笑んで
「もう寝なさい…」
そう言って優しく頭を撫でた
心地よい温かさに包まれて私は夢に吸い込まれていった
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