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その後の事は彼は覚えていない。
気付いたら、児童保護施設にいた。
彼の名前は高塚ホマレ。年齢は10歳。背丈は140cm程、真っ黒な髪の毛が左半分目を覆うように隠れている、右目だけがかろうじて見えるようなショートヘアだった。可愛らしい顔つきなのだろうが、自分の顔を毛嫌いしていた彼は顔を隠していたのだろう、前髪で片目を隠して、歩くときは少し下を向く格好で歩く。
印象としては暗い印象があるが、彼はどこか強く自分の意思を感じる。
大人が嫌いだった。
どんな大人も自分を見る目は哀れみ、同情し、下らない感情ばかりを押し付ける。
自分だって立派に生きているんだと、叫びたかった。
名前はホマレ、誉れ高い人間に生きろとでも言いたかったのだろうか。
自分自身の名前も彼は好きでは無かった。
自分自身が好きだと言えるところなど無かった彼は、今一番苦手な集団行動の場にいる。
学校は毎日通ってはいた、家にいるより全然マシだったからだ。
友達といえる友達もいなく、彼はどこにいても孤独だった。
どうやって友達を作ればいいのかも、誰とどうやってコミュニケーションしたらいいのかも判らなかった。
勉強はその代わり、良く出来た。ただ、覚えればいいから。
子供だからって、どこにもいけない。自力で働くことも叶わないから、家という牢獄にずっと10年間囚われていた。
勿論、彼の生まれた時の写真や、アルバムなんてものは一切ない。
どうして自分を生んだのか、毎日悩んでは生きる事、死ぬこと、そういう事に対してどう向き合えばいいかわからなかった。
そんな彼は今、児童保護施設で自分のような境遇でここに入れられている子供たちに出会ったのだった。
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