宿った力

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「ホ、マ、レくーん!おはよう!」 明るく元気な声がホマレにかけられる。 六畳の部屋の中に布団を引いてそこで転がって寝ていたホマレは、その声を聞いて布団から少し顔を出して応える。 「なんだよ…朝からウルサイな」 ホマレはそう言うと布団をもう一回かぶると、ふて寝をする。 するとその声は部屋の中に入ってきてホマレの布団をはいだ。 「もう朝だよ!起きなってば!今日こそお話するんだからね!」 「…嫌だ」 「ダメ。今日は一緒にお話するって私は決めたの!だから出てきて!じゃないと抱きつくぞぉ!!きゃぁ~!」 その声の主はメンタルフレンドという、孤児や精神的に病んでしまっている子供の友達として心を開いていくというボランティアをしている、中尾ククリという18歳の心理学科の女子大学生であった。 「やめッ!!なんだよ!!起きればいいんだろ!?ったく、勝手に触んな!」 ホマレはそう一掃すると、布団を蹴り上げて起き上がった。 「そうそう!それでよし!今日はお天気も良いのよ!散歩しながらお話しようよ」 ククリはそう言うと施設の小さな窓を開ける。 「…お前はいいな、悩みがなさそうで」 ホマレがそう言って布団を片付けながらククリに皮肉っぽく言うと 「悩みのない人間なんてこの世にいるのかな?」 ククリはホマレが布団を片付けている様を後ろから覗き込みながら言った。 「さ、朝食食べて、お散歩、お散歩!」 ククリはホマレの手を引いて食堂まで連れて行こうとした。 「だーかーら!やめろっていってんだろ!?手勝手に触んなよな!!」 ホマレはそう言うと、洗面所までダッシュして、両手をゴシゴシ洗い出した。 ククリはその姿を見て、とても切なくなってしまうのと、自分はどうしてあげれるのかを考えてしまう。 そしてククリも洗面所に行くと、ホマレは呟いていた。 「汚い…!!あぁ、もう…洗っても洗っても取れない…!!」 ジャージャーと水がホマレの手を洗い流している。何度も石鹸をつけてはホマレは水で自分の手を洗う。 その必死さを見てククリはホマレに言う。 「…ごめんね。食堂で待ってる」 それだけ言うとククリは食堂へ出て行った。
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