宿った力

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気の済むまで手を洗い終わったホマレは、食堂に行った。 食堂には五人の保護されている子供がいた。 一番年上で17歳、一番下で6歳。 ここは一時的に預けられてる子もいれば、天涯孤独でここで生活している子もいる。 ホマレは後者にあたる。 親戚も引き取り手がなく、両親がいないのでもうこの施設を頼らなければ生活は出来なかった。 ホマレが来るとすでに全員揃っていた。 「いただきます」 そう言って朝食のパンと目玉焼きと牛乳を食べ始める。 家の料理より全然うまく感じるホマレ。 親の作ったもので好きだったものなんて何かあっただろうか。 惣菜売り場のハムカツやコロッケが美味しかった気がする。 今度は隣に座っていた梶野ミィナ、それこそ最年長の17歳の女の子が声をかけてきた。 「あんたこんな味気ない料理よく毎日飽きずに食べられるわね」 そう言いながらミィナは牛乳を飲む。 「別に。給食とかそういうの嫌いじゃないし」 そういうとまた二人沈黙して食べだした。 「ほんと!今日はお散歩日和だわ!!お昼用意してどこかで食べましょう!私サンドイッチ作ってあげるから!」 窓から差す光が暖かな秋を彩っていたので、それを感じたククリがそういうと、ホマレが言う。 「お前の作ったサンドイッチなんて食えねぇよ!!昼飯作るんだったら俺が自分で作る!だからお前は触んなよ!」 そう言ってバンッと机をホマレが叩いた。 「ご、ごめん。それなら一緒に作りましょ?ね!」 「…それなら…」 そういうとククリは少し嬉しくなって、 「ホマレ君の為に頑張るぞ!!オー!!」 と一人で腕を上に上げて喜んでいた。 するとミィナが、 「あんたも大変なんだね」 そうコソっとホマレに言うと、 「まぁね。あれで心理学科の生徒とか、ありえねぇと思うんだけどな」 ぶつくさと二人がいうのを横目に、ククリは 「あはは…」 と笑うしか無かったようだ。 ホマレはどうも他人の匂いのするものが苦手で、さっきも手を触れられたり、サンドイッチの手作りなど、もうどう反応していいのかわからなかった。気持ち悪いというのは少し違う、なんというか照れくささもあるし、怖さもある。 そんな感覚だった。
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