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「えっとね、今お試し授業期間でしょ? 僕が出ようとしてる講義で二人一組の講義があるんだよー! リーティル先生の……えーと、んー」
彼が言っているお試し授業とは、とりあえず講義を受けてみてから履修を決める、言わば仮登録期間のことだ。講義名が浮かばないらしい彼に、助け舟を出すことにする。
リーティル教授は錬金学の教授だ。そして二人一組。一年の講義。思いつくのは忌々しきあの授業。
「自然錬金学Ⅰ……か?」
「そうそれ!」
自然錬金学Ⅰ。一年で取れる講義だが、過酷なダンジョン探索な上、パーティが二人いなければ彼女の目に止まり確実に単位をもらえない絶望の講義じゃないか! もちろん私は去年前期のⅠも後期のⅡも両方落としたぞ!
「貴様そんなの取るのか!? 弓士学科だろ!」
「うーん、でも僕ね、錬金に興味ある!」
む……。なんという光り輝く眼差し。
「もしかして、先輩は錬金術嫌い?」
「え?」
いや、錬金術は、嫌いじゃないといえば嘘になる。寧ろ寮の自分の部屋に自前の釜があるほど好きだ。
「そ、そうだ! 嫌いだ!」
私は何を言っているんだ。錬金術の講義が受けれて、憧れの二人一組を作れて――
「じゃあ尚更! 講義受けたら好きになるー!」
まるで小さな子におまじないをかけるように、彼はそう言った。元気に緑色のアホ毛を立たせ、万歳と手を上げながら。
「っていうか僕まだ先輩しか知り合いいないから何か怖い!」
彼は素直にそう言葉に出す。
「わっ、わかっ……ええいっ! 光栄に思うが良い一年坊主! 炎術学部剣士科期待の星、このイツキ・リュードが貴様を助けてやろうではないか!」
ここで私も素直に応対したかった。まあ、断らなかっただけマシか。彼は何を考えているのかにこにこと笑っている。
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