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そして、気弱そうな、否絶対に断らないように見えた一年に愛刀――何度も言うがプラスチック模造刀を突きつけたところで我に返り涙目になりながら冒頭に戻る。
穴があったら入りたいが、今更後には引けない。引くわけにはいかないのだ。私の――イツキ・リュードの名にかけて。
そして上級生、同級生が止めないのは確実に面白がっているからであり、後で私をネタに笑うつもりで――
「はーい! 僕なるよー! なるなるー!」
つもりで、え?
キョロキョロとあたりを見回し、小さい緑髪のアホ毛の横から手が伸びているのを見つける。
そのアホ毛はずんずんと私に近づき、彼は姿を現した。
まだ制服に着られているような感じのあどけない表情の童顔の男。頭には立派なアホ毛を携え、金色の瞳を細めながらにこにことこちらを見つめていた。
風術学部を表す緑色のネクタイに弓士学科を表す制服の胸のエンブレム。
「仕方ない! いいだろう! 不本意だが――貴様を私のパーティー第一号としてやろうじゃないか! 名は何という!」
内心嬉しくて嬉しくて仕方ない私はにやける顔を隠さずに聞いた。
「パルケエスパーニ・パルロップ・パリミリョンでーす!」
「パピプペポ?」
素で聞き取れずそう返した。まるで早口言葉みたいな名だ。
ちなみに、そこでさすがに時間切れとなり私の新入生歓迎会ジャックはギリギリ未遂に終わった。この後事務部や教授からしこたまお叱りを受けたが、私は舞い上がっていた。
そう、このパピプペポ(仮)との出会いが私を大きく変えていくのだと、この時の私は淡い期待を抱いていたのだった――。
この後、自分がどんな青春を送るのかなんて知りもせずに。
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