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クルーフェス学園は全寮制である。今日もどうせ変わらない日常が待っている。一人寂しく授業を受け、一人寂しく昼飯を食べる。それはもう悟りを開きそうな境地で。
私は長く伸びた赤い髪を纏めながら鏡に向き直る。黙っていれば自称普通の女の子。口を開けばさあ大変。そこは自分でも理解している。しかし、無意識に構成された私の自我が止まることを許さないのだ。
瞳は煌めかんばかりの翡翠の瞳。やはり外見だけを見ればまだマシな気もする。少なくとも友達がいないようには見えないだろう。
最近はそこそこお洒落に気を使ってはいるし、剣術の稽古もかかさずにやっているのだ。
しかし、私に話しかけてくるものは誰一人としていない。昨日の新入生歓迎会で暴挙をしたので今年も――
はて。そういえば、あのアホ毛はどういう気持ちでああいうことを言ったのだろうか。やはり私のためにああ言ってくれたんだろうか。
本当にパーティーを組んで――
ああ、期待してはダメだ。あまり期待してはパーティーを組んでくれなかったときに大ダメージを受けてしまう。
私は寮の食堂で味がわからない朝食を済ませてから、朝食前に厨房を借りて作った昼食をカバンの中に入れて、本物の愛刀を腰に差す。【剛剣フェルシオン】。ただのサーベルだ。
昼食はいつも自分で作っている。一年のころからの夢は女子生徒との「そのおかずとりかえっこしよー!」だ。ああ、神よ。どうやら今年もその夢は叶いそうもない。
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