竜ヶ崎天の必然

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五月某日。 時計の針はちょうど午前三時を回った頃。 某マンションの某一室の某ベランダに、竜ヶ崎天はいた。 五月とはいえまだこの時間帯は肌寒い。 天は作ったばかりのインスタントコーヒーで体を温めながら、時折傍らにおいた望遠鏡で夜空を眺めていた。 「あれがアークトウルスであれがスピカ……デネボラ!春の大三角形!」 夜空に燦然と輝く星達を見て天は満面の笑みを浮かべる。 過度の天体オタクである彼にとってこの時間帯はまさに至福の時だった。 いつもは深夜十二時から三時頃まで天体観測をして、その後就寝するという天だったが、今日は特別だった。 なぜなら明日、正確には今日の午前七時頃から百年に一度と言われる金環日食が起こるからだ。 太陽と月が重なり合うという金環日食。 そんな奇跡の天体ショーに天の好奇心が高ぶらないはずがない。 母親が「七時に起こしてあげるからちゃんと寝るのよ」と言っても天は頑として首を縦には振らなかった。
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