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「おい、じいさん。今度はどんなイカサマしやがった?」
手に持った一枚の紙を見るや、男は自分の背後でふんぞり返って椅子に腰掛ける老人にそう問いかけた。
その声色には隠そうともしない苛立ちが含まれていたが、問われた老人は意に介した様子もなく、男に背を向けたまま「はぁ?」といいかげんな返事を返して、綺麗にハゲあがった自身の頭頂部をポリポリと掻く。
男はそのカラッポな返事には何も言い返さず、黙って老人の背後に近づくと、手に持ったその紙を眼下の禿頭にパァンと勢いに任せて貼り付けた。
「なにしやがる!綺麗な音させやがって、オレの頭は打楽器じゃねぇぞ!」
老人は驚きと怒りを適当に口にしながら、それでも背後を振り返ることもなく頭に張り付いた紙を摘まんで取ると、さぞ面倒臭そうに紙の内容に目を通した。
「なんじゃこりゃあ!?」
そこに並んだ名前を認識して、老人が始めて男に振り向いた。
驚愕に両の目は見開かれ、顎も外れそうなほどに開きながら、男と同じ問いを男に問う。
「おめぇ、こりゃいったい何のジョーダンだ?」
その反応を見て、男はこの老人の仕業ではないと確信した。
嫌な汗が男の額にじわりと滲む。
その様子に、老人も男と同じ判断を男にくだした。
――だったら……
二人の思考が共通する。
――こりゃ、どうなってんだ?
二人を動揺させるその紙の正体。
それはとある新しいクラスの名簿だった。
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