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薄暗い部屋の中を照らす蝋燭の火がふわりと消え、今まで、例の「鏡」の前で呪文を唱えていた白装束の奴らが、黒く重い扉の奥へと消えて行った。
私はそれを、扉とは反対側の閉ざされたカーテンの隙間から確認すると、真相を確かめるべく音を立てぬよう「鏡」の側へ歩み寄った。
本日は、私たち少年少女心霊探偵事務所設立以来初の仕事である、鏡来神社神隠し事件の偵察日である。
依頼主は神隠しにあった子供の親で、私は昼間からこの一番怪しげな鏡の間に張り込んでいる。
鏡の前に立って初めて、鏡に白い布が掛けてあるのに気がついた。私はしゃがみこんで布に手を伸ばしーー
ゴトリ「誰っ」
咄嗟に声を上げ、音のした方へ歩み寄る。そこにはお供え物と思われる、真っ赤な林檎が落ちていた。人の気配は、ない。
大方、ネズミの仕業だろうと胸を撫で下ろし、再度布に手を掛ける。勢いよく剥がすとー
「えっ」
そこに現れたのは、不気味に鏡面を波打たせる、鏡とは形容し難い物だった。
恐る恐る、その鏡面に手を触れてみる。刹那、私の体は鏡に引きずり込まれていった......のだと思う。
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