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「大丈夫、次は・・・」
その言葉を聞いた瞬間、私は持っていたクリアファイルを会議室の机に叩き付けた。
運悪く角に当たった部分が欠け、そう言った杉田の顔に破片が当たる。
「根拠の無い慰めなんかしないで」
本当は謝るべきなのかもしれないが、今はそんな事よりも苛つきの方がはるかに勝っていた。
分かっている。
コンペに落ちたのは私の所為。
杉田は何も悪くない。
寧ろ、色々協力してくれて感謝しているのに。
ただ、このタイミングで「大丈夫」だなんて声を掛けて来た事が、私の逆鱗に触れたのだ。
大丈夫なんて曖昧で頼りない言葉は大嫌い。
「大丈夫?」 「大丈夫だよ」 「大丈夫だから」
優しい響きに隠れて、本音が全く見えてこない。
相手を気遣っている様でその実、一歩距離をとって様子を伺っているだけの言葉は、何の慰めにもならない。
慰めにならないどころか、その言葉は私の嫌な記憶も呼び覚ました。
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