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太陽が空高く天頂に昇る昼過ぎ。いっぱいの日差しをのみ込んだアスファルトは熱く、歩くと上からも下からも熱を感じる。
季節は夏至を過ぎた頃。
学校の授業が終わり、お昼休みで込み合う東京の都心を、とめどもなく流れ落ちる汗に苛立ちながら進んでいく。
なんでわざわざこんな真っ昼間に外を歩かなければならないのか。早く帰りたいと先走り、終わって早々に学校を出たのがいけなかったのか。自習でもして冷房の効いた部屋で夕方まで待機していれば良かった。
「ぁっつ……。」
電車の中に入れば少しは涼しいのだろうが、いかんせん、まだ五分は来ないだろう。
鞄からタオルを取り出して汗を拭う。
電子掲示板に書かれた、準急・和光市行13:56と書かれているのを見つめる。
持っているケータイに目を落とすと、今は44分だった。
ため息を吐き、ケータイを鞄へしまう。もう少し待つようだ。
げんなりしながら鞄をかけ直してため息をつくと、いきなり電車が到着した。
「…………は?」
時間は45分。まだ電車が到着する時間には早いはずだ。
だけどまぁ、乗れるんならさっさと乗って冷房の効いた中で涼むか。
特に気にすることもなくその電車に乗った。
「…………。」
電車の中を見回しても私以外に乗客は見当たらない。楽で良いけど。
「ふぅ………。」
一番近くにあった座席に座ると、また一気に汗が噴き出してきた。
鞄からタオルを出して汗を拭い、団扇代わりに扇ぐ。暑い………。
出発時間までまだ時間がある。しばらくすれば乗客も増えるだろう。それまでしばらく眠っておこうか。
《ご乗車ありがとうございます。この列車は急行、黄泉行きです。途中、止まる駅はございません。》
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