「夢だけどー夢じゃなかったー」

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――――― ―――― ―― 暖かい、水の中……。 ただよう意識。霞がかかる意識。 自分がなんでこんなところにいるのか、疑問が尽きることはないが、このただよう水の中では些細なことのような気がして、うまく思考が働かない。考えたいのに頭が動かない。ぼんやりする。もしかしたら私はこのまま溶けてしまうのではと思ってみる。でも、それも良いかもしれない。それほどまでにここは居心地が良い。 ググ……。 何かに押し出される。 嫌だ。まだここにいたい。ここにいさせてよ。 グググ……。 あっ頭が割れる!痛い痛い痛い!潰れる!やめろ! 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い! 「おぎゃぁぁあッ!おんぎゃあ!んぎゃぁぁぁぁあ!!」 「産まれました!!元気な男の子です!」 目がッ!目がぁぁああ…ッ!眩し過ぎて目が開けらんねぇ!そして頭いてぇ!誰だし近くで出産したやつ!おめでとう!誰だよ!私か!? 目が開かないから分からないけど、会話の内容からして私は産まれたのか?なんかだっこされてお湯に使ったような感覚があったんだけど。 さっきの凄まじい頭痛が出産によるものだったら?赤ちゃんの頭蓋骨は出産時に変形して孔から出やすくしているらしいし、そりゃ痛いはずだ。 腕を動かしたり足を動かしたりしてるし、目も開けようとしている。それでもまったく思うように動けないのはそう言うことなのか? 私、産まれ…た? 「ぁ、ぁう…………。」 待ってよ。それじゃあ今までの私は?友達は?家族は?これまで積み上げてきた全てはどうしたの。まさか、私…………。 「死んだ………?」 「ええ、その通りです。」 「――――ッ!?」 気が付けば私は白い空間に立っていた。 肩には今までの私が持っていた鞄が。服は最後の私が着ていたものを着ていた。 そして背後には駅員姿の見知らぬ男性。 「困りますよお客さん。間違って黄泉行きの電車にのっちゃあ。」 男は勝手に話し出す。 黄泉行き?何をバカなこと言ってるんだこいつは。そんなファンタジックな行き先が普通の駅にあってたまるか。棺桶に片足突っ込んでる爺さんのもとにでも行ってこい。
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