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「あれ、久しぶり」
「……佑二さん?」
金茶色の、髪。
ちらりとも見えない目を、なんとか見ようと、雅は。
手に持った、ウォールナッツのジャムペーストの瓶を置いて、おもむろにその髪に指を伸ばした。
「…………相変わらずだね」
払いのけるでもなく、暖簾のように指先で避けられた前髪もそのままに、呆れをはっきりと浮かべた目で。
佑二は、慌てて手を引いた雅を見つめて、頬を引きつらせる。
「ご…ごめんなさい」
再び見えなくなった、金茶色に隠された目が、多分、店内を見回すのを、ほんのり恥ずかしそうに見やって。
雅は小さく、首を傾げた。
「お仕事ですか?」
「ですよ?無関係な奴がレジに立ってるとでも?」
「……」
ああ、相変わらずの曖昧な笑顔が可愛いねぇ、と佑二は。
あからさまに馬鹿にしたように、笑った。
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