花火の度に(たぶ恋)

5/10
前へ
/563ページ
次へ
数日で縫い上がった雅の浴衣は、そのまま由紀本人の手で、届けられた。 「今夜の…花火大会に間に合って、安心しました」 「………ぇ…」 雅の部屋で、するすると着付けながら、由紀は。 きゅ、と緊張した雅に気がつかないわけがないのに、にこりと笑顔を浮かべた。 「や…由紀さん、雅ちゃんは…花火大会には……」 不安げに目を泳がせた雅の代わりに、鷹野が口を開いたけれど。 「一樹さんがエスコートして差し上げれば大丈夫ですよ」 ねぇ、雅さん。 一緒なら、大丈夫よね? 「……………は…ぃ」 決死の覚悟、とでも言わんばかりの堅い返事は。 到底大丈夫だとは思っていないことを、はっきりと表しているようだった。  
/563ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1109人が本棚に入れています
本棚に追加