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ここに一つの嘘がある。
ここに一つの嘘がある。
口から虚を吐き、人を騙す言葉がある。
それは虚勢。
それは僕の虚像。
《人の為》と書く《偽》物なんかではない、ただただ己を隠そうとするばかりの卑しいものだ。他人を慮る心などは一切なく、弱く卑怯で強かな、そういう心の機微だけでしかない。
しかし、どうだろう。何年も生きてきて、嘘を一度も吐かなかった人なんてこの世に存在するのだろうか。もしそんな人が居るとするのなら、僕は一目、会ってみたい。
その人がこそ、自身ですら明かす事の出来ないこの嘘を、隅から隅まで余すところなく、綺麗に取り払ってくれる事だろうと、そう信じて――
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