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些細な犯行予告を一番に目にしたのは、担任の教師だった。
小・中・高と特に目立つこともなく育ち、友達と遊んでいるよりも勉強時間の方が長かった為、そこそこの大学に入り、安定した職種を望んだ結果、この春に中学教師になったばかりの言わば新米。
全校生徒があまり多くはないその中学で、一年生の担任になって初めて出した宿題の中で彼女は《それ》をただ自然な流れで読んだに過ぎなかった。
彼女の名は丹辺 永遠子(ニイベ トワコ)。
美人でもなければ不細工でもない。底抜けに明るいわけでも、学園ドラマに出てくるような熱血教師でもなく、熱い情熱を掲げているわけでもない。
どこにでもいる、極々平凡な女性だ。
「ん~…」
白い小さなテーブルの上で、今日回収したばかりの宿題チェックをしていた永遠子はうなった。
「どうかしたか?ワコ。」
永遠子の声に気付いた男が、キッチンから顔を覗かせる。
大学で知り合い、今はこの狭いワンルームで同棲している、永遠子の人生初の彼氏、満(ミツル)だ。
「ん~、今日ね、この間出した作文の提出日だったの。テーマは『将来の希望』。コミュニケーションはかる意味でもいいと思って。」
永遠子の話を聞きながら満は出来上がったばかりの料理を白いテーブルに持っていく。
永遠子が広げていた作文用紙を丁寧に揃えておろし、夕食を並べていく。
「それがどうかしたか?」
「見てよコレ」
一枚の作文を満に渡す。
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