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その3、平賀 麗(ヒラガ ウララ)の場合。
小学四年生から、スカウトを受けモデルをしているのだという。
同世代向けのファッション誌で笑顔を振りまいている彼女は、直接話してみるとマニキュアを塗りながら目も合わせてくれなかった。
「え~?そんな宿題ありましたっけ?アタシ忙しいんですよ、先生~。」
その4、笹塚 奏介(ササヅカ ソウスケ)の場合。
父親が大学病院の理事長。母親はその補佐で、歳の離れた兄は同じ病院の外科医。さらに一番歳の近い姉は大学で法医学を学んでいる、いわばエリート家族。
絵に描いたような優等生は教師からの信頼や期待も厚い。しかし彼は終始笑いながらこちらを完全にバカにしていた。
「誰が出すかってのあんなくだらないもん。こっちの内面知る必要あんの?それとも上っ面でも『正解』書いたら満足?無意味なことするほど俺らだって暇じゃないし。ちょっとみくびりすぎなんじゃない?センセ。」
その5、志水 静蘭(シミズ セイラン)の場合。
笹塚奏介の幼なじみという彼は、非常に大人しく、常に奏介の傍に身を置いていた。
祖母がロシア人らしく、色素の薄い茶髪を学年主任に指摘された時は、彼自身ではなく奏介が抗議し、地毛だと認めさせたという。
「ぁ、あの…っ、…奏ちゃんが、出さないって言うからっ………ごめんなさぃ。」
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