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「イチゴ」 なんでもいい、どうでもいい。私は苺だ。 男はイチゴを食べたらいいのだ。 練乳をかけて、ひたすら食べつづけたらいいのだ。 「いつもこんなことしてるの?」 会話うざい、黙って。 私話しするのきらい。 一応お客だから、仕方なく頷いた。 「君、高校生だよね?いいの?こんなことしてて」 この男、うるさい。 頼むから黙って。 ホテルのテレビでゆずの「からっぽ」が映っていた。私の大好きなゆずのPV。 それを見ながらいろんな姿勢で男に抱かれた。 私の意識はゆずにしかなかった。 からっぽなのは今の私だ。 一万5千円で男に身体を売る私自身のことだ。 中身なんて何にもない。 すっからかん。 男を入れる穴があるだけ。 「君、いいね」 こいつ、ほんとうるさい。 息づかい、はぁはぁ言って気色悪い。 何にも感じない私は不感症だ。 もしここにテレビがなくてゆずが映っていなかったら私は天井を一点見つめていただろう。 虚しくはない。 もともと私には何もない。 感じることもない。 ただの苺。 練乳をかけられ食べらるだけの運命だ。 明日も、あさっても、繰り返し人間をやめて苺になる。 これが今の私だ。 ‐完‐ image=452063301.jpg
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