プロローグ

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「ハァ・・・ハァ・・・」 ある一人の男が桜の木に背を預けて座り込んでいた 白銀の髪に黒く冷たい瞳 男の視線の先には、血だらけで倒れている人達 自分が倒したのでたろう、男は返り血を浴びていた 「痛って・・・」 口から流れる血を服で乱暴に拭く 「あんたがやったの?」 男の後ろから、女の声がした 男は驚いたよう後ろに身構える が、立てない 「誰だ!?」 「ただの通行人」 雲から月が顔を出した 満月の光が2人に注がれた 男は息を呑んだ (・・・っ!?) 女があまりにも綺麗すぎたから 金色の長い髪 大きく漆黒の瞳 満月の光は女を引き立たせる役でしかない 「あんた強いんだね」 女は男の方へ歩み寄る 「来るな」 男は冷たく言い放ち、女を睨んだ 「・・・」 「来るな!!」 女は男の言ったことを無視し、男に近付く そして、男の前で止まり、男と視線を合わせるようにしゃがむ 「来るんじゃねェ!!!!!」 男は右拳を挙げ、女を殴りかかる 「!?」 が、女は左手であっさりと拳を止めた 「死んでる・・・」 「あぁ?」 女は男の拳を離した 「あんたの瞳は死んでる」 女の真っ直ぐな瞳に男の心は跳び跳ねる 「せっかく、綺麗な目してんのに何も映してない」 男はまた殴ろうとした けど女に止められる 「何が悪い・・・」 「心まで失うよ」 女はハンカチを取りだし、男の腕に巻く 「お前・・・族か?」 男は大人しく、女の手当てを見ていた 女の服の隙間から見えてしまった ─紅い蝶を─ 「!?」 男は驚いた 〝蝶〟 それは族なら誰でも知っている〝紅幻〟を束ねる総長〝紅桜の蝶〟 の模様にそっくりだったから
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