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勇者は咄嗟に盾を地面に突き刺すと、魔王の放った炎を耐えた。少し押されて、踏ん張った足元から砂埃が舞った。空中に飛び上がった魔王が右手を振り上げると、勇者の視界が熱で歪んで、空中に火球が数えられないほど浮かぶ。
「躍れ、クリムゾンスペルヴィア!」
「――っ!」
魔王の号令と共に火球が勇者へと迫る。勇者の居た場所が業火で包まれた。盾を置き去りにして魔王の攻撃を回避した勇者は飛び上がり、勢いよく斬りかかった。
「でやぁあああぁあッ!」
「甘い!」
魔王の拳が勇者の剣が振り下されるよりも早く、勇者の鳩尾を捉えた。勇者の身体がそのまま地面に打ち付けられる。
「がはっ――」
「さっきの威勢はどうした、勇者よ!もう終わりか?」
勇者が立ち上がろうとして、傍らに2人の仲間が倒れていることに気が付いた。
――次の攻撃は、絶対に避けられない。
慌てて立ち上がると剣を構えて、魔王を睨む。
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