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堂々と名乗る男の後ろで、目を開けた勇者が複雑な表情で男を見ていた。
「え……何?誰?……っていうかどこから出てきたの?キャプテンクローヌ?」
「否!我輩は鋼鉄の英雄<HERO>、キャプテンクローム!」
「……焼き払え、クリムゾンスペルヴィア」
先ほど魔王が放ったよりも多く激しい複数の火球が、キャプテンクロームと名乗った男に向かって飛んでいく。キャプテンクロームが絨毯の上を駆け抜けると、火球が規則的に地面を穿った。
(あの変態、速い……!)
キャプテンクロームがバク転で最後の火球を避けて着地し、身をねじって飛び上がった。魔王が迎え撃とうと蹴りを繰り出して、キャプテンクロームは右腕で蹴りを外側へ弾いた。その右腕で素早いパンチを繰り出して、その拳が魔王の頬を捉える。ひるんだ隙に鋼鉄のブーツで腹に蹴りを入れると、体操選手のように綺麗なフォームで後ろに一回転し、両手を広げながら着地した。
「強い……!なんだかわからないが、勝てるかも――」
キャプテンクロームは振り向きざまに、勇者の腹へ拳を入れた。拳は鋭く目では追い切れなかった。
「なッ――な……んで……!」
勇者の意識は、そこで途切れた。
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