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切れてしまったケータイをポケットに仕舞う。
「おい、ケイ。電話誰だ……って何泣いてんだよ」
相方が怪訝そうな顔をする。
「泣いて、ない」
「泣いてんじゃん」
「うるさい、お前帰」
俺の声に、インターホンの音が重なった。
「何だ? 客か? っておい!」
驚いている相方を余所に、玄関へ駆けて行き、ドアを開く。
「ちょーとっきゅーで来たよぅ。みいちゃ……どうしたの?」
「桜庭さん」
桜庭さんの姿を見て、目からボロボロと涙がこぼれ落ちた。
「さくらばさ、俺の、俺だけ」
「あ~、ダメだよぅ。目、擦っちゃダ~メ」
目元を擦ろうとした腕を取られ、そのまま抱き込まれた。
「よしよ~し。落ち着いてぇ。何があったか言える?」
桜庭さんのスーツを掴む。
「俺、だけ」
「ん?」
「桜庭さん、俺だけのだよね? 他のヒトなんて居ないよね?」
「居るわけないでしょー。仕事柄出逢いなんてそうそうないし、好きになったらちょー一途なのにぃ。みいちゃん以外、誰が居るって言うの?」
「だって、騙されてるって」
「騙す? 誰が誰を? て言うか、だぁれがそんなこと言ったわけ?」
「化野(あだしの)が」
「誰、それ」
「俺ですけど」
相方、化野の声がした途端、さらに強く抱きしめられた。
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