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ダンダン! という発泡音と共に射出された二発の弾丸。それらは前進する緋村の横を通り過ぎ、自動甲冑兵の足元の床を穿つ。
すると、そこから直径一〇センチはある何か植物のツタが伸びる。爆発的に成長したそのツタは、自動甲冑兵の足を絡め取り、すぐさま胴体に巻き付いた。
植物弾。
魔術の力を込められた銃弾──魔弾の一つで、拘束力に特化した一品だ。
「今だよ茜ちゃん!」
「了解!」
柚稀の声に応じると、緋村は自動甲冑兵との距離を一気に詰める。
そして魔武器の燈女椿を振りかぶり……思い切り振り下ろす!
「だあああああああ!!」
ガァァン!! という金属音の後、自動甲冑兵は膝から崩れ落ちた。さらに刀身の炎がツタに引火して、鉄の塊は炎に包まれる。
緋村は小さく息を吐き、顔を上げる。
ちょうど正面では、別の自動甲冑兵が今まさに倒されたところだった。その周りには千秋と二人の先輩が意気揚々と立っている。どうやらあちらも終わったらしい。
(さて、あとは……)
「緋村さん! 後ろ!」
と、どこからか声が飛んでくる。
けれどその声が届くより早く、緋村は横へ滑るように移動した。
直後、ズバッ! と。
緋村がさっきまでいた場所の空気が縦に斬り裂かれる。流れるような動きに合わせて視点を後ろに向けると、彼女の背後には巨大な両手剣を振り下ろした状態の自動甲冑兵がいた。
周りのどこを見ても他に甲冑兵の姿はない。これが最後の一体のようだ。
チャキ、と自動甲冑兵が両手剣の刃の向きを変える。剣を斜め上に斬り上げて追撃しようとしているようだが、もう手遅れだ。
「ハァッ!」
一瞬だけ気合を入れて緋村は右足を前に出す。しっかりと床を踏み締めて、彼女は燈女椿を水平に振るった。
そして……決着がつく。緋村が魔武器を消すと自動甲冑兵は前のめりに倒れ込む。
続けて、ピピ──ッ、というブザー音が鳴り響き、上空には魔術の力で立体化された文字が現れる。
それは今回の模擬戦の終了までのタイムと評価ポイント、そしてすべてにおいてのトータルスコアだった。
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