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柚稀と千秋がいつまでもニヤニヤして見てくるので、緋村は呆れて溜息を洩らし、
「……そんなくだらないこと言う暇があるなら、今のミッションの反省でもしたらどうなの? 見つめ直すべきところはいくつもあったでしょ」
「反省って言われても。俺っち的には文句なしだったぜい。むしろ今のが何で一〇〇点じゃなかったのか、疑問にさえ思ってるのに」
「あたしもあたしもあたしもー。今のはミスなく完ペキにキマッたと思ったのに。何で九三点なのさ?」
柚稀と千秋は眉間に皺を寄せ、今の点数にケチをつける。足りない七点は最初あんた達が考えなしに突撃して危うく自動甲冑兵に一撃貰いかけたからじゃないの? と心の中で呟き、緋村はまた溜息をこぼす。
それから数秒無言の時間が生まれ、しばらくすると柚稀が『でもさでもさでもさー』と切り出して、
「二ヵ月前と比べたらあたし達すっごく強くなってると思わない? 最初のチームミッションの時なんて自動甲冑兵二体を相手に三三点しか取れなかったでしょ」
「あー……。そう言われればそうだな、うん。あの時と比べたら俺っち達凄ぇ進歩してるのかも」
「かもじゃなくて、そうなんだよ。だから自動甲冑兵二〇体が相手でも九三点も取れるようになったんじゃん」
確かに。柚稀が言うように、緋村達の実力は二ヵ月前──まだ治安維持委員会に入ったばかりの春休みと比べると随分上がっている。最初は一時間もしない間に動けなくなっていた訓練も、今はどうにか最後までやり通せているし、前の闘論会でも英明館学院の治安維持委員会相手に快勝できた。
けれど、
「もうもうもう、力がうなぎ登りって感じ? 今じゃこの訓練も地獄っていうほどしゃなくなってきたし、これなら英明館学院の三年生が相手でも簡単に勝てちゃうんじゃない?」
「………」
ここ最近の訓練が地獄だと感じなくなった、それほど辛いと感じなくなったのは自分達の実力が上がったからだけではないと緋村は思う。
それもあるかもしれないけれど、その理由の大部分は指導する顧問の教師が緋村達に付きっきりで指導する機会が少なくなったからだ。
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