思い悩む思春期達

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ちょうどその時だった。 連続して激しくぶつかり合う金属音と共に怒号にも似た声が地下訓練場に轟いた。 「……あの二人。今日はまたいつも以上に荒れてるみたいだぜい」 わずかに竦めた肩を楽にして、千秋は声が聞こえた方向を向いてそんな事を言う。 柚稀に続いて、緋村もそちらを見る。 この長方形型の地下訓練場は今、防御結界によって三つに区分されている。緋村のいる場所が中央。そして今の声は右から聞こえた。 結界越しに見えるのは、凄まじい速度で魔武器(アーム)をぶつけ合う顧問の天河崎輝と『鴉』の柳生一心だった。 スガガガギギギギン!! と嵐の如く(セメ)ぎ合う中で、二人は言い合いをしていた。 「おいおいどうした先生サマよぉ。最初より動きのキレが悪くなってるじゃねぇか。まさか、もうへばってきちまったのかぁ!?」 「そういうお前こそ、息が切れ始めているぞ。それに口数もずいぶん減ったようだし。へばってきたのはそっちお前の方だろ!!」 「たかが三〇分。この程度の打ち合いで俺の体力が消耗されるか! 何より、俺はまだ実力の五〇パーセントほどしか出してねぇぞ!!」 「そうか五〇パーセントも出していたのか。残念だったな。私はまだ三〇パーセントの力しか出してないぞ!」 だったら俺は二〇パーセントの力だそれなら私は一五パーセントの力だ何だと、まるで小学生みたいな意地の張り合いをする天河崎と柳生。 ふざけているとしか思えないが、もしここで緋村が一〇〇パーセントの力で二人の戦いに加わっても、きっと勝ち目どころか、一撃与えるチャンスもないだろう。 それほどまでに、天河崎と柳生の戦いは壮絶を極めていた。 あれで本当に魔術を使わず、武術のみで戦っているのか疑問にさえ思う。 これは訓練で、ちゃんと寸止めできるから何の問題もない、みたいなことを訓練前に話していたが、どちらも本気を出している。本気で、相手を倒そうとしているようにしか見えない。 もしここで武術のみで戦う二人に魔術を使って戦いに加わったら……なんて考えてみたが、緋村の頭の中に勝つビジョンは浮かんでこなかった。恐らく放った魔術を簡単に躱されて、二人から一撃ずつもらってノックアウトするのがオチだろう。
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