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はっきりと言えるのは天河崎も柳生も桁外れに強いという事だ。
「………」
ここ最近、緋村は自分が本当に強いのか、強くなっているのか分からなくなっていた。自分は古代魔術という特別な力を有している。国からも強さの証としてS.C.《セカンドコード》の称号を貰った。自分が世界一強いはず、なんて大きな事は思わないが、少なくとも天河崎先生や理事長を除いた大衆よりは力があると思っていた。
けれどそれは間違いだった。自分は井の中の蛙だった。特別な力も、称号も柳生の前では何の意味もないほどに柳生は強い。
あまりに規格外すぎるので彼は治安維持委員会に入ってから一度もチームミッションに参加した事がない。彼が一匹狼気質だからという理由もあるが、本人曰く『俺がテメェらに合わせて力をセーブしなきゃならねぇなら、チームでやる意味ねえだろ』とのこと。
それに何より、柳生は六人がかりでやった今のミッションを既にひとりでクリアしてしまっている。それも緋村達よりも格段に早く、得点も一〇〇点だった。
(……まさに一騎当千の仲間って感じよね)
──いや。厳密に言えば柳生は治安維持委員会の仲間ではない。
彼のここでの肩書は治安維持委員会の『補佐』ということになっている。しかしこの委員会に『補佐』なんて役職は存在しない。これはこの委員会にしかない役職で、名称は緋村が勝手にそう呼んでいるだけだ。
何故補佐なのかと聞かれれば、柳生を正式な仲間にしようと必要な書類を申請した翌日、本部から通達があったのだ。
その内容を要約すると、先日の闘論会が中止になったのは柳生一心が原因だと外部から情報が入った。もしそれが本当ならそのような危険な少年を治安維持委員会に迎え入れる訳にはいかないとの事だった。
本来なら柳生の仲間入りは取り下げられているはずだったのだが、天河崎が本部に乗り込んで役員を説得し、また噂では理事長の口添えがあったおかげで妥協案として『補佐』という役職が作られ、そこに柳生が宛がわれたのだ。
非公式なため、緋村達のように制服の支給はない。けれど滅多に攻撃を受けない彼にそんなものは必要ないだろう。
──そして。
ここには柳生以外にもうひとり、柳生とは違う理由で補佐になった少年がいる。
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