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このままじゃ……と、諦めかけた時だった。
「………!」
木々に囲まれた細い道を抜け、開けた場所に出た仰木は、視界の隅に見えたブランコの近くにいた魔導警察官を発見した。
懐中電灯を片手に周囲に目を配っているところを見るに、見回りをしているようだ。
目の前の選択肢を選ぶのに悩む必要はなかった。仰木は走るスピードを落とすことなく、一直線に魔導警察官のところへ向かう。
「……た、助けてくださいっ!」
警官にすがり付き、助けを乞う。
「知らない人に追われてるんです! もうすぐそこまで来てます!」
制服の裾を掴み、ぐいぐい引っ張ると、向こうを向いていた警官がこちらに振り返ろうとする。
「お願いします! 早く何とかしてく……」
そこで仰木の言葉は止まった。両目を見開く彼女は、掴んでいた警官の制服を放し、ゆっくり後退る。
「……な、何で……」
"その警官の目は金色に光っていた"。
その輝きは後ろから来る不審者と同じだった。妖艶で怪しく闇の中を照らしている。
──そして。
「グッ……ォォオオオオオオオオオオオオアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
「あっ──ああああああああああああああああアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
公園の中で、少女の叫びが轟いた。
……その後の仰木朱熹について知る者は、誰もいない。
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