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「あら。私に拷問する気ですか? あなたの腕がどれほどか存じ上げませんが私は元軍人。このような場合を想定した訓練はしていますの。簡単に口を割るとは思わないことですね」
余裕の笑みを見せるライラに対し、柳生はニヒルに笑い返す。
――ヤベェ。どうするかな。
表情とは裏腹に柳生の内心は焦っていた。拷問すると予想させる発言を先にしたのは柳生本人なのだが、実のところ彼はそういう行為が得意ではなかった。
龍巻や柳生の父親はよく『お前は力加減が絶望的にヘタすぎる』と言っていた。二人が言うに、相手が恐怖で喋れなくなるまで追い込んでしまっているのだとか。柳生自身にその自覚はないがそういうことらしく、かといって手心を加えれば拷問ではない別の何かになるのだそうだ。
また情報を聞き出す駆け引きも下手くそで、相手がだんまりになると『言え、言え』の一辺倒になる。だから相手をビビらせて勝手に話してくれるような状況を作りたかった。しかしそれに失敗してしまった。
こうなれば、もう仕方ない。
「ご忠告どうも。それじゃあ早速――テメェが知ってること、洗いざらい話したくなるよう頑張らせてもらおうか」
…………結果的に言えばロッカスの居所は聞き出せた。だが拷問はやはりうまくいかなかった。
やり過ぎないように、と細心の注意を払ったのが悪かったのか。
「はっ、は――あああああああああああああっ♡」
柳生の拷問を受けていたライラは終始、何故か気持ちよさそうな艶っぽい声を上げ続けた。
――――――――
緋村は魔武器である木刀『燈女椿』の柄を握りしめ、サムライ風の髪型をした男――フィクスに突撃する。
「やあっ!」
横からの一閃を打ち込む。フィクスは後ろに跳び、間合いの外に出ることでそれを回避する。
「千秋!」
緋村の声に合わせてフィクスの背後に回り込んでいた千秋が攻めかかる。魔武器の棍で突きの連打を浴びせようとした。だが、そのすべてをフィクスは両手でいなし、また素早い足さばきで回避する。
千秋がフィクスの足を止めている間に緋村も距離を詰める。挟み撃ちにするポジショニングを確保しつつ木刀を縦、横、斜めにと連続で振るう。前と後ろからの攻撃に対し、フィクスはのらりくらりとした動きと両手で武器を弾くことで躱し続けていた。
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