思い悩む思春期達

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とは言っても、神隠し事件に遭った人達が無事かどうかまでは分からない。彼らがいなくなったため魔導警察は『失踪、または誘拐された可能性がある』と発表しているが、もしかすると自分達の知らないところで彼らは帰らぬ人となっているかもしれない。 「………」 千秋と柚稀が三年前の──肝喰(チャエルノボーク)の事件を口に出したのは、悪気があったわけではないはずだ。そもそも、何か意図してこの話題を出せるはずがない。 この二人は龍人のトラウマを知らないのだから。肝喰(チェルノボーク)との因縁も、護藤七美(ゴトウ ナナミ)の事も。 闘論会の後、龍人は病院で『すべてを話す』と言って自分の事を打ち明けた。 しかし、すべてというのは嘘で、話したのは自分の家、つまり『鴉』の事しか話していなかった。三年前の事には一切触れていない。 話す必要がないと思ったから、話したところで手がかりを得られるわけでもないと思ったから、など理由はいくつもあったが、一番の理由は巻き込みたくなかったからだ。 まだ一カ月も経ってないけれど、千秋に柚稀、そしてここの治安維持委員会(エリア・セイフティ)のメンバーがとても優しい人達だというのは分かる。話せばきっと協力しようとするに違いない。 それでは駄目なのだ。 あの殺人鬼との事は自分だけの問題。決着は自分自身が付けるべきだろうし、もし自分と関わっていたせいで命を落とすようなことになれば償いたくても償えない。 (……何にせよ肝喰(チェルノボーク)との事は悟られないようにしないと……) 「何怖い顔してんのよ」 と、龍人が思案している横から、声が飛んできた。 はっと我に返ると、いつの間にか一人増えていた。 さっきまでそこにいなかった赤い髪の少女が翡翠色の両目でじーっと龍人を見つめている。 「それにさっきまで何か話し込んでいたみたいだし。まさかまた悪さを企んでいるんじゃないでしょうね?」 「……? あの、緋村さん。いつからいました?」 「ついさっき。三人が三年前がどうこう言ってた時くらい。……って、あんた気づいてなかったの?」
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