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※
『申し訳ありません。ルティエ・カーネイスを逃しました……』
その一報を聴きながら、とある男は豪華なソファーに座りつつ、優雅に紅茶を啜っていた。
通信機越しに聴こえる報告をして着た男の声が、何処か上ずっているのを面白く思いながら。
失敗の報告をする目下の人間ほど、面白い反応を見せる事は無い。
シス教団の教祖、アラルト・ラル・アンフェルは、カップに角砂糖を入れながら、そう考えていた。
「そうか。お疲れ様」
『は、はい……』
どうやら、まだ何かある様だ。
この絶妙な間。つくづく人心と言うのは面白いと思う。
『あの……無粋な事をお聞きしたいのですが……』
「ん?」
『教団の真実と彼女は言っていました。教団は、ハルー人を保護しているのですよね……?』
「勿論。ハルー人をホマル人の迫害から救っているんだ」
淡々と答える。
__そうか、ルティエ・カーネイスはだから……。
(だったら、面白いな……)
アラルトは含み笑いをし、言葉を続けた。
「シス教団の事を信じ続ければ、世界は平和だよ。争いも何も無い、美しい世界さ。共に見てみたいじゃないか、そんな世界を……さ」
『はい。自分、信じています! 通信終わります』
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