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プツ__。
音が途切れた途端、アラルトの身体は震えていた。
「クフフ……!」
それは恐怖によるものでは無く、ただ純粋なる、喜びによるものであった。
「面白いじゃないか。……ルティエ・カーネイス」
狂気的な笑みを浮べつつ、一人だけの部屋の中で、アラルトは静かに立ち上がった。
「君が願う理想の世界と、教団が謳う真実の世界……。その答えを決めようじゃないか」
そして歩み寄る、シスの銅像の前へ。
アラルトはそれを見上げ、仰いだ。
ホマル人とハルー人。その二つの存在を生み出した張本人である神、シス。
そのすぐ横には、巨大な壁画も飾られていた。
題名は、《落日》。
内容はシスの最期の時が描かれた物だ。
「…………」
アラルトはその壁画を、じっと見つめた。
絵は、シスが巨大な狼の様な化け物に襲われている様子を描いた物であった。
ホマル人とハルー人と言う二つの存在を生んだ神を、怒りに身を任せ、滅ぼしている。
ハルー人から見れば、理不尽に抗う正義の番犬が、シスを倒していると言った方が良いか……。
ホマル人から見たこの絵に対する感情は、また違うのであろうであろう。
「神々に災いをもたらす番犬、フェンリルか……」
神を喰らう狼の蒼い瞳が、自分を強く睨み付けて来た気がし、アラルトは少しだけ驚いていた。
「また神を殺す気なのかい? だけど君が背負う罪は少々重いよ……」
壁画に描かれた怒りの表情はそれでも変わらず、アラルトはそんな狼の顔を、細い指でなぞっていた。
「それでも抗うのか。それもまた、一興だね……」
そのアラルトの笑い声は、いつまでも響いていた。
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