プロローグ

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 __相容れぬ存在。  人とは自身に出来ぬ事を、平然と出来てしまう他者に対し、強い劣等感を抱くと言う。  この世界セウィドに存在する二つの人種、ホマル人とハルー人。 それはこの世界セウィドに創られた、目には見えないが、巨大で、決して崩す事の出来ない、対立の溝。  見た目や習性(勿論、個人による違いはある)、そのどれもが同じ人であると言える。 しかし決定的な違いが、ハルー人にのみ使える、魔術と呼ばれるものであった。  魔術。火を出す事、水を蓄える事、風を起こす事。 人が時代と共に進み、発達させた文明の進化でさえ覆すこの術は、ハルー人にのみ与えられた特権。  __或は呪いであった。  ホマル人にしてみれば、自分達に出来ない事をしてしまうハルー人が、その時は恐怖の対象でしか無かったのだろう。 各地でハルー人は、元より人口が多かったホマル人に迫害を受けてしまう。 魔術の所存で、ハルー人は自分達よりも快適な暮らしが出来ているから、と言う簡単な理由だ。  やがて何処かで起きた小規模な争いが、世界中に広がり、セウィドに創られていた壁は最悪の形で、無理やり崩壊されてしまう。
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