32人が本棚に入れています
本棚に追加
/431ページ
___新生暦550年。
橙色の夕日が、惑星セウィドの地平線の彼方へと消えて逝く……。
美しき自然の景色の中、男の怒声が響いていた。
「街の方角に逃げているぞ!」
「逃がすなよ!」
逃走用に着用したマントの裾をぎゅっと握りしめ、追われる身の少女は走り続けていた。
何度か転んだりして、擦り傷が身体中に付いていた。
立ち止まりたくなる程の痛みであったが、それでも止まれなかった。
(連れ戻される訳にはいかない……!)
追手の者は、漏れなく全員、シス教徒であった。
何の為に教団から逃げているのか?
すれ違う人々には分からないだろうが、その答えは少女のみが知っている。
「その女を捕まえろ! ハルー人だ!」
ハルー人。
後方の男がそう言った途端、周囲を歩く人々が一斉にざわついた。
「なっ!? ハルー人!?」
「なんでこんな所にハルー人がいるんだよ!」
逃げる少女の前に、次々と人が立ち塞がり、慌てて道を曲がる。
《ノーティスへようこそ!》と町名が書かれた看板を素通りし、ひたすらに走った。
「痛っ!?」
突然、何者かに腕を引っ張られ、少女は激痛に顔をしかめながら悲鳴を上げた。
最初のコメントを投稿しよう!