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「は、ハルー人を捕まえたぞ!」
この街の住人であろう男が、右腕を掴んで大声を上げる。
きっとホマル人だろう。と言うより、自分以外にこの街にハルー人がいる筈も無かった。
彼らは皆、教会の中で……。
その事を思い出し、少女は力を振り絞って男から逃れようとする。
「お願い、離して!」
「だ、駄目だ! ハルー人は大人しくシス教会の中に居なくちゃ駄目なんだろ!?」
次第に大きくなってくる追手の足音。
男の言葉に少女は「駄目なの!」と、叫んで首を横に振っていた。
「教団に戻る訳にはいかないんです! 教団の本当の事を誰かに知らせないと!」
「何を言っているんだ……!?」
少女は戸惑った男の一瞬の迷いを見て、腕を勢いよく離し、再び走り出した。
あと一歩の所で少女を逃した教徒達は、それでも距離をますますつめて来ている。
後ろを振り向きつつそんな事を確認していた少女の進行方向から、不意に強い風が吹き付けた。
轟音と共に、思わず身体が飛ばされそうになる風であった。
「これは……!?」
黒い煙を上げながら、長い鉄の塊が走っている?
無数の車輪が、その巨大な身体を支えて進んでいた。
「ここまでだな、ルティエ・カーネイス!」
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