あいつのチン毛は暗黒物質

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その圧倒的な旋律を崩す手段を、僕達はもはや持ち合わせてはいなかった。しかし、たとえ持っていたとしても、彼は自らの悪意、狂気、それら全てをもってして僕らを打ち砕くだろう。 そんなビジョンに戦慄しているうちに、ベースのチャンが崩れ落ちる。 「なんと他愛ない……所詮はこの程度か……」 彼は真底つまらなそうな顔を僕に向ける。 タンッ 打楽器……それは僕のドラムと同じ分類、しかし、性能では確実にこちらが勝っていた。 故の、困惑。負けるはずのない戦いに負けるという奇跡ーーーーーー悪夢 タンッタンッ 「一体……何者なんだ……お前は……」 僕は問いかける。僕以外のバンドメンバーを、1ビートのもとに葬り去り、そしておそらく、これから僕を葬り去るであろう、朱蒼の悪魔に。 彼は答える。 「全日本カスタネット教会害楽狩り所属……モリタ……貴様を潰した男の名だ」 タンッ………タンッタンッタタンッタンッ 彼は刻み始める。それは憎しみ、悲しみ、悪意、敵意、この世の全ての『負』をのせた、圧倒的なビート。その膨大な情報を目の当たりにしてーーーーー僕の意識は途切れた。
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