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李梗は走った。息が切れて苦しくなり、顔が赤くなっていた。
どうしても会わねばならない人がいたからだ。
「姉上様!」
李梗は、ハァ、ハァと荒い息を吐きながら言った。
呼び止められた水蓮は足を止め、李梗を見た。
李梗は、水蓮の手をとり、
「姉上様、お願いがございます。どうか、父上に考え直してくださるよう助言して下さい。姉上様の頼みなら父上様も聞いてくれます」
声をからして言った。
水蓮は、李梗の手をはらいのけ、
「気安く、姉上と呼ぶでない」
その声は低く、眼に刺すようなひかりを帯びていた。
李梗は、何が起きたのか分からなかった。
水蓮の人のよさそうな顔が、別人のように鋭い眼つきをしている。
「罪人の子がよく、宮中を出歩けるものだな。王妃が何だ? 自業自得であろう。
私には関係のないことだ」
そう吐き捨て、李梗を一瞥すると鼻で笑った。
「行くぞ」
水蓮は、付き添いに言うと自室に戻っていった。
李梗は動けず、その場に立ち竦んだ。
今のは、嘘であってほしいと思った。
優しかった水蓮が、自分を突き放し、王妃を信じてくれなかったのだと分かったら、涙がとまらなかった。
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