光の先にあるもの

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王妃が亡くなり、宮中は落ち着きを取り戻したように見えた。 宮中では李梗を庇いたてる者は乳母の桐(とう)しかいなかった。 外を出歩くと、皆からの視線が突き刺さり、息苦しくなる。 自分を慕ってくれた水蓮はもういなかった。 心から助けてくれる者はいないと、李梗は身に染みた。 頭上で、三日月が嘲笑うかのようにひかっていた。 夕刻の講義を終え、とぼとぼと歩いた。 足元の短い影が寂しそうについてくる。 「痛っ」   石につまずいてしまい、転んでしまった。 うっすら、膝から血がにじんでいる。  ポタ、ポタッ、  李梗の眼から涙がこぼれ落ち、手についた砂が流れた。   ……母上様、私はこれからどうすればよいのですか?  光を失った今、李梗は絶望感で胸がいっぱいだった。 泣いていると、誰かの影があるので、顔を上げると冴がいた。 「冴……」  慌てて涙を拭った。憎い自分の無様な姿を見て、良い気味だと思っているちがいないと李梗は思った。 すると、目の前に冴が手を差し伸べてきた。 「王妃様は無実です。姫様は何もしていないのだから堂々とすればよいのです」  冴は、嘘偽りのない真の眼をしていた。心から、王妃を分かっていてくれる者などいないと思っていた。 出口の見えない闇の中に、一寸の光が見えたような気がした。 『誰かが手を差し伸べてくれます』  李梗は、溢れるように涙が一気にでた。母の言葉通り、そこには手を差し伸べていた冴の姿があった。 冴の手をすがるようにつかむと、冴は李梗を起こした。  そして李梗と冴は、強いひかりを帯びた眼で、宮殿に向かって見つめた。
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