光の先にあるもの

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一 西日が和宮国(かずみやこく)の城邑を淡い朱色に染めていた。 川沿いの菫が、風がなびくたびに揺れ、春の匂いを運んでいる。 夕餉前なのか、あちこちで子供の笑い声や叱りつけるような女の声なども聞こえてくる。 日々の暮らしは平穏で、町は活気に満ち溢れていた。 ここまで平安な国はないと人々は感じていた。 かつてここは戦乱の最中にあった。互いに勢力を争う和宮国・淋城国、貝塚国。 これらの国々の、血で血を洗うような戦 は、長きに渡り人々から自由を奪っていた。 人々の願いは、太平の世になることだった。 古代の和宮国の女王は乱世に太平の御世をもたらしたことで名君と称えられた。 その女王が残したと言われる歌がある。 いつしか、人々は平安が続くようにと歌を崇めるようになった。 歌は後世まで受け継がれたが、女王が籠(こ)めた歌の意味はなんだったのか今は知る者はいない。 白い雪よ かすみは 花よ 川のように ながる 傍に花よ 白い雪よ かすみは 花よ 花は 雪と寄り添い 命限り 白い雪よ かすみは 花よ 雪を見上げれば 花は咲く
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