光の先にあるもの

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そのとき扉があいて誰かが入ってきた。 「それで、李梗は元気がなかったのですね」 室に入ってきたのは王妃だった。 王妃は二十八歳。十五歳で王妃に選ばれたが子が授からず、苦労したが二十歳のときに待望の子を授かった。 それが李梗である。 色白で微笑む姿は天女のようだと言われていた。 「母上様」 李梗は屈託のない笑みをあいた。 水蓮は立ち上がると王妃に席を譲った。 「母上様、どうぞ」 水蓮にとって王妃は生母ではないが、国の母であるため、母上と呼ばなければならない。 水蓮が王妃に茶を入れているとき、 「母上様、私は冴に何をすればよいのでしょうか」 李梗は、しおしおとした声で訊いた。冴のことで気が休まらなかった。 「冴は今、ひどく心を痛めて孤独と戦っているはず。そなたが側にいて諦めず、接しておあげなさい。さすれば、心を開いてくれるに違いない」 王妃は、穏やかな微笑を浮かべ、李梗の頭を優しくなでた。 王妃は一口だけ茶を飲んだだけで、室を出て行った。 李梗は何か違和感を覚えた。 ……母上様は用があったのでは。  冴のことを訊くためにわざわざ、水蓮の室まで訪ねるのはおかしい、何か話すべきことがあったはずだと李梗は悟った。
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