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二
屋根を打つ雨音が聞こえる。朝から雨が、また強くなってきたようである。
狭い室は薄暗く、息が詰まるような大気が澱んでいた。
室には、王妃は椅子にかけて、王妃の目の前に官庁が座っている。
「王妃様、全てをお話するまで我々も新たな手を打つ覚悟にございます」
官庁は蛇のような眼で王妃を睨んだ。
「全てとは? 私は全てを話した。これ以上、尋問しても無駄でしょう」
王妃は官庁の眼をそらさずに答えた。王妃の威厳を確(しか)と保っている。
「左様ですか……。それは残念でなりません」
と、くぐもった声で言った。双眸だけが笑って王妃を見すえている。
官庁は配下に小さな布袋を出せと命じた。
官庁は、配下から受け取った物を机の上に置き、王妃に見せた。
「これが何かお分かりですか?」
だが、王妃には布袋を見ても何も分からなかった。
眉宇を寄せていると、
「この中身は毒にございます」
この男は何としてでも、王妃の自白をされるつもりだった。
官庁の非道なやり方に王妃は怒りを覚えた。
「このような物まで用意して私に罪を被せるつもりか?」
官庁を射るように睨み付け、語尾を強くして言った。
「我々が用意したのではなく、王妃様、ご自身が用意したものでは?」
官庁が静かな物言いで訊いた。
調べによると、毒を取り寄せたという記録書が見つかり、王妃の実印が押されていた。
しかし、それは何者かによる王妃を陥れるための陰謀にすぎなかった。
王妃は少し、黙っていたが再び官庁を強い眼で見た。
自分は用意していないと、はっきりと答えた。
「このことは陛下もご存知です。王妃様の口から全てを話して頂きたかったのですが残念にございます」
官庁は低い声で王妃を見据えた。
……陛下はご存知?
陛下は全てを知った上で尋問し、自分を疑っていることが茫然自失だった。
こんな胸が痛みつけられたことはない。
「王妃様、この意味を分かって頂けましたか」
官庁の口元が笑っているように見えた。
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