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由紀の手料理上手節をまったく信じなかった篤斗はインスタントラーメンを食べることにした。
お湯を温めている隣で由紀はいろいろな具材を出して慣れない手つきで包丁を握っている。
トンットントンッットンッッットン…。
物凄く不規則になる音。
―こいつ……有り得ねぇほど料理下手だな…。
横目で由紀の包丁さばきを見ながら調理を続ける。
インスタントなのですぐに出来てしまった。
大きいお椀によそってテーブルに置き、椅子に腰かけた。
由紀の料理が出来るまで待とうと思っていたが、間違いなくあと1時間は掛かると考察して、篤斗は麺を啜りだした。
その間も由紀は黙々と調理を続ける。
やはり、鳴る音は不規則で手際はお世辞にも良くない。
それでも奮闘すること約1時間、やっと由紀の手が止まった。
由紀は汗を拭いながら達成感に満ちた表情になった。
「できたぁ!」
その料理を机へと運んだ。
その瞬間、篤斗は目をギョッとさせた。
「な、なんだこれ…」
その料理は大根やジャガイモ、牛蒡や豆腐がぐちゃぐちゃに入って、漆黒に満ちた汁が染みた禍々しい物だった。
由紀は見栄を張る。
「し、知らないの…この料理…。これ今流行ってるんだよ!」
「へ、へぇ…」
―そんなのが流行ってたら人類滅亡だよ…。
引きつった表情でその料理を見ていると、由紀がとんでもないことを提案してきた。
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