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風呂…それは必ず人間が産まれたときの姿に還る場所…。
この二人ならば自ずと緊張が走るだろう。
ここで、由紀がその重々しい口をゆっくりと開いた。
「じ、じゃぁ、下に行きましょう…」
篤斗はコクリと頷き階段を下りる。
浴場に着くまで二人は無言だった。
恐らく、お互いにいろいろと考策を練っているのだろう。
篤斗は体を見るための…由紀は見せないための…。
一人の高校男子なのだからそういったことに興味をもつのは致し方ない。
それは由紀も十分承知である。
だから、自分の体に興味を持ってくれるのは少々嬉しいのだが、絶対に見られる訳にはいかないのだ。
浴場に着き、篤斗が口を開いた。
「で、どっちから先に入る?」
「そりゃぁもちろん、二人で入るわよ…」
「えっ!?二人で入るの!」
「当然よ…」
そう言いながら由紀はアイマスクを装着させ、頑丈な縄で篤斗の手を縛った。
「え…なにこれ…」
「こうすれば、私の体を見たり触ったりできないでしょ。さ、私が体洗ってあげるから、入りましょ!」
そのアイマスクの下からは光る雫が流れ落ちた。
「そ、そそそ……そんな馬鹿なぁ~~!!」
期待を大きく裏切る展開に篤斗は夜空に向かって叫んだ。
こうして、体が入れ替わった二人の、一日目が無事終了した。
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