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由紀は人差し指を立てて篤斗に顔を近つける。
「あともう一つ問題はあるわよ!」
「え…まだ何かあるの…?」
つくづく鈍感な篤斗に再びため息をついてヤレヤレといった感じで由紀は答える。
「あんた…本当に鈍感ね。あと一つの問題は、私の親が許可するかどうかよ」
篤斗は手をポンと鳴らす。
「あ…そっか…大丈夫、任せろい!絶対にうまくやってやるよ!」
自信満々に答える篤斗に由紀は心底不安だった。
しかし許可は取らなければならないので二人は由紀の家に向かった。
その道中、篤斗は由紀から家での口調などをこと細かに聞いた。
その口調を何度も何度も復唱し、なんとか習得した。
そして、篤斗たちは南家へと着いた。
その扉を篤斗は開ける。
「ただいま帰りました!」
ドアを開けると、そこには高校生にも引けをとらない…美しい女性が立っていた。
「おかえりなさい。あら!その方は彼氏?」
一瞬、由紀のお姉さんかと思われたが話し方から母親だと判明。
―めちゃくちゃ若ぇな。
―でも喋り方は40代…。
「そぉでぇ~す!!」
由紀から教わった口調で、篤斗は精一杯のかわいさで由紀の腕に抱きついた。
由紀の顔はひきつっていた。
お母さん両手を頬に置いて満面笑みを浮かべた。
「あらあら、たくましい男だこと!」
由紀の母は反対することなく、すんなり受け入れてくれた。
ここで、篤斗は勝負を仕掛ける。
「あの~。あたし、今日から彼の家で暮らしていいですか?」
指を唇の近くに置いて篤斗は言った。
すると母は目を大きく見開いた。
その目は輝きに満ちていた。
「まぁ、由紀さん!とうとう自立なさるのね!この幸恵感激でございます!どうぞお二人で暮らしてらっしゃい。彼氏さん、由紀さんをよろしくお願いします」
深々と頭を下げる母。
二人は軽々と承諾してもらい、家を出た。
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