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篤斗は満面の笑みで、由紀は腕をぐだぁとぶら下げて歩いていた。
上機嫌な篤斗は由紀に話しかける。
「意外と簡単だったな」
由紀はそのままのテンションで返す。
「うん…そうだね…」
どうやら簡単すぎて、ショックを受けているらしい。
―私って、親から大事にされてないのかしら…。
何はともあれ、こうして二人の生活は始まった。
篤斗の家に着く頃には由紀のテンションは元に戻っていた。
「さて、早速これからのことを話すわよ!」
中に入るなり、由紀が手を組みながら言ってきた。
しかし篤斗は意味をとれずに首を傾げる。
「これからのこと?別に普通に生活すればいいじゃん」
呑気な言葉に由紀は額に血管を浮かべた。
「あんた馬鹿でしょ…?あんたとあたしの性格はほぼ真逆なのよ?あんたは明日から私を完璧に真似なくちゃいけないし、私はあんたを真似なくちゃいけないの」
由紀は深刻な表情になる。
これはかなり難しいことである。
篤斗は運動神経抜群だが頭が悪い。
逆に由紀は頭脳明晰だが運動神経が悪い。
さらに篤斗と由紀は同じクラスだが別段仲がよかった訳ではない。
つまりお互いの性格、仕草、癖などはまったく知らない。
そんな状況で、明日から普通に学校で暮らして行かなければならないのは、かなり至難の業である。
しかしそんな大変なことだとは思っていない篤斗は、適当に流す。
「まぁそういうことは後々慣れていけばいいんじゃね?それより、家の中案内するよ」
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